イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD WRブルーマイカ

イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(1)

今回は、イクソ の 1/43 ヴィヴィオRX-R 4WD を紹介。

 この HP を始めた時、「かつては「メーカー不在」と呼ばれたスバルのミニチュアも、レガシィ登場以降徐々にその数が増えてきて、嬉しい悲鳴を上げているスバリストも多いことでしょう。」と、それでも当時はまだ数は知れていた スバル の ミニチュアカー も紹介することで、クルマ の ホビー としての一面に 「奥行き」が出せたらいいなぁ、と考えていたのだが、この分だと ドミンゴ や ジャスティ、果ては P-1 まで出てきかねないほど、スバル の ミニチュア化 が進んでいる今日この頃。

 困った。金がない。

 なにしろ、サンバー まで、しかも フルディティールキット としてモデル化してしまうというのだから呆れる。他のメーカー の 軽トラック なんて、「なしのつぶて」 である。スバル の場合、 サンバー ですらこだわりどころ満載なのだ。バラしてみればそれは分かる。

 では ヴィヴィオ は? 厳密にいえば、これまでもなかった訳じゃなかった。ダイヤペット から ヴィヴィアンレッド の RX-R が、カートピア を通じてスバリストに向けて販売されたことがあったし、「たのみこむ」 で、1/43 の レジンのインゴットにシャフトでタイヤを取り付ける、という内容のキットが発売された。それに、エポック社 の エムテック から、ヴィヴィオ ビストロ がいくつかのバリエーションで発売されていた。だが、どういう訳か、ダイヤペット、たのみこむ の RX-R は数が少なく、エムテック はスケールモデル として鑑賞に堪えるかというと、やや力不足だったと言わざる得ない。

 だが、待てば海路の日和あり、というのが 今の スバリスト にとって幸せなところ。その ヴィヴィオ の 「決定版」 がついに登場したのである。

イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(2)

1992年3月、KH/KP型 レックス に代わり、富士重工業 の 「原点」 ともいえる、軽乗用車 のセグメント を担うべく誕生したのが ヴィヴィオ である。

 ヴィヴィオ を語るにはまず レックス を、レックスを語るには R-2 を、R-2 を語るには スバル360 を語らなければならない。スバル の 歴代の軽乗用車 は ラビリンスパッキン のように繋がっている。

 その レックス の変遷を辿るのもなかなか楽しい。1972年 6月 に登場した 初代は、時代に合わせてアップデートしたスキンとは対照的に、そのパッケージング、メカニズムは、多くの人から 3年 という短命なモデルライフに終わったことを根拠に 「失敗作」 と決めつけられる、水冷R-2 の見事なまでのキャリーオーバーだった。

 スバル の軽乗用車の歴史は、表層的な目新しさより、ロジカルで実質的な 「改良」 を繰り返してきた歴史である。

1992年3月発行 ヴィヴィオ スーパーチャージャー カタログ

R-2 から レックス へと移行して1年余り経った 1973年10月。1958年 の スバル360 に搭載された Ek31型エンジン 以来継承してきた 2ストローク方式 に終止符が打たれ、4ストローク の EK21型 へ移行。1975年12月 には、軽自動車規格の見直しを前に、358t・EK21型 のまま、空気導入式燃焼制御システム = SEEC-T の採用で、軽自動車として最初に 昭和51年度 排気ガス規制に適合。

 1976年5月、新軽自動車規格 に対応した レックス5 へ移行して、エンジンは 490t の EK22型、さらに 1年後 の 1977年5月 に登場した レックス550 では、排気量 を 544cc に拡大した EK23型 が登場。この EK23型 は、1981年8月、駆動方式 を RR から FF へ転換した KF/KM型レックス、1986年11月登場 の KG/KN型レックス が、ヴィヴィオ にも搭載される 4気筒 EN07型エンジン の前身、550t の「クローバー4」EN05型エンジン へ換装されて KH/KP型レックス へ移行する 1989年6月まで、のべ8年間、3世代にわたり搭載され続けた。

 EN07型 は、1990年2月、レックス660 の登場から、2012年3月 の サンバー の 最終ラインオフ まで、DOHCヘッド や AVCS への対応などの改良を施されながら、実に 21年間 にわたって スバル の軽自動車を支えた。考えてみればすごいことである。

 その スポーツエンジン の変遷も、1968年11月登場の ヤングSS では SUツインキャブ、1970年3月登場 の R-2SS から 1973年9月 まで生産された レックスGSR では、ツインバレル36PHHキャブ、排気ガス規制 でその系譜が途絶えて、1983年12月 に 日立製加圧式キャブレター方式ターボチャージャー、KG/KN型レックス へ移行して 1年あまり また系譜が途絶えて、1988年3月 に EK23型スーパーチャージャーエンジン が登場して、1990年2月 に、EN07型スーパーチャージャーエンジン にバトンを渡し、2011年2月 で生産を終了している。

 こうしてダラダラと羅列してしまうと、ちょっと猥雑で分かりずらいので申し訳ないのだが、スバル の 軽自動車 の 変遷 は、一時に全部変える、というような ドラスティック な移行ではなく、代を跨いで、コツコツ、コツコツと、地道に改良を積み上げてきた歴史である。

 1967年に、スバル360 が軽乗用車のシェアトップから陥落して以来、企業規模、あるいは スケールメリット の面で、常に 富士重工業 はマイノリティの立場に立たされてきた。この変遷を辿るだけでも、そういうメーカーが、ひとつのマーケットで生き残っていくことがどれだけ大変なことなのかが分かるはずだ。

 だから、そうした変遷など知る由もなく、あるいは 知ろうともせず、ひたすら 富士重工業 の 軽自動車生産からの撤退を非難し続ける人間はすべて、私に言わせれば 「市民プールの幼児向けプール並みに底が浅い阿呆ども」 ということになるのである(笑)。

イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(3)イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(4)
イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(5)イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(6)

そうした変遷の中にあって、ヴィヴィオ は、すべてが変わった 「オールニュー」 の スバル の 軽乗用車 として、その存在は光り輝いているといえるだろう。

 エンジンこそ、EN07型 で KH/KP型レックス からのキャリーオーバーだが、バン を除いて すべての車種が 電子制御マルチポイントインジェクション になって、実質的な性能はもとより、メンテナンスフリーとフレキシビリティも格段に向上したし、スーパーチャージャーエンジン には、従来の SOHC に加えて、ノンバックラッシュギヤ駆動 DOHC ヘッドまで新造された。

 これが RX-R のみに搭載された EN07X型エンジン で、当時、BC5 でモータースポーツを戦っていた私に、ディーラー勤務のドライバーが 「いや、ホントに凄いんですよ、騙されたと思って一度乗ってみてくださいよ」 と言われて、私は上から目線で 「よしよし騙されてやろうじゃないか」 と笑いながら この RX-R 4WD に乗り込んだ。

 座ってみてまず驚いたのは、レブリミットが 9,000rpm から目盛ってあることだった。スバリスト としてこれはあまりにも衝撃的なことだった。スバリスト は回るエンジンを好む。それも直列4気筒エンジンのように 「息も絶え絶えになりながら 7,000rpm」 なんて許せない。一気にそこまで回って、そこではトルクバンドを外さなくて済む、フレキシビリティとレスポンスに溢れていること ----- それが 水平対向エンジン の素晴らしさなのだが ----- が、スバリストが求める、一番大切なスポーツエンジンの資質だ。

 よく EJ20ターボ について、「トルクの谷間が、トルクの谷間が」 と書きたがる 評論家 がいる。おそらく女性の胸の 「谷間」 も気になる人であろう。私も気になる。言っておくが、どんなエンジンだってトルクの谷もレブリミットもある。私に言わせれば、EJ20ターボ で速く走ろうというのに、そこまで回転を落とさなければ走れないということ自体、「私は クルマ を速く走らせる スキル も 経験 もありません。」 と自ら公言しているだけである。

 だからって 9,000rpm なんてホントかねぇ?

 その日は生憎の雨模様だった。

 信号で止まる。スロットルを深く踏み込んでみる。9,000rpm を超えても、フューエルカットが効く気配はまったくない。心配になった。ECUが壊れているんじゃないかと思ったのだ。歩行者信号が点滅し始める。ひとまず 7,500rpm でクラッチをミートするつもりで ギヤを1速に入れ、スロットルをキープした。BC5 に比べると、羽のように軽いクラッチである。

 信号が変わった。クラッチが繋がったことを確認して一気にスロットルを開ける。瞬間的に 155/65R13 の ミシュランMXT が四輪でズルリとホイールスピンしたのが分かった。

 たまげた。焦る。そんな心構えなんてしていなかった。1速 はほとんど瞬間的に吹け切って、9,500rpm のレブリミッターに当てて、フューエルカットが入った。気を取り直してシフトアップ。ギュイ ー ン という ルーツ式スーパーチャージャー の作動音を伴いながら、ほとんど暴力的ともいえるほどの勢いで車速が伸びていく。これは痛快だ!

 コーナーが見えてくる。100R程度、2速だろう。走り始めてからずっと、轍にたまった水がホイールハウスに跳ね上げられて当たる、ゴーッ、ゴーッという音が断続的に続いている。

 ブレーキングからターンイン。レックス ではここが難しかった。ペースを上げてフロントに荷重を移すと、まずフロントが逃げ、その後リヤが唐突に滑り、どうしても思うようにアクセルを開けることができなかった。だが、ヴィヴィオ は違っていた。ブレーキングでフロントに荷重を移して、ブレーキを残したままステアリングを切り込み、アクセルを開けるとキレイに釣り合いの取れた 4輪ドリフト が始まる。あとはスロットルで思うように姿勢と曲率をコントロールすることができるのだ。

 しかも、BC5 レガシィRS に比べて、車重は 500kg も軽いから、圧倒的に慣性マスが小さくて身軽で軽快だった。その日は一日中、土砂降りの雨の中、ワインディングを駆け回っていたと思う。「おっとっと」ということもなかった。「自分の皮膚の皮一枚」 の感覚でクルマをコントロールできるから、自分の限界を越えることがなかった。その限界の中で、自分なりに速く走らせることに神経を集中していると、時が過ぎるのを完全に忘れてしまっていた。ドライビングの奥深さを、私は ヴィヴィオRX-R からたくさん教わった。

 忘れられないクルマである。

イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(7)

モデルについて。

 全体的なプロポーションや、ディティールについては、価格を考えれば、その出来映えに文句は付けられないのではないかと思う。

 WRブルーマイカ の ボディカラー は・・・まあ、ご愛嬌といったところだろうが、一時期は、 中古車市場 でも、外装がヤレた RX-R や RX-RA を、この WRブルーマイカ に全塗装するのが流行った時期もあったから、これはこれで悪くないと思う。しかもよく見てみると、ソリッドではなくちゃんと メタリックブルー で、しかもきちんと マイカ が入っている(笑)。

 でも、個人的には、やはり フェザーホワイト か、ヴィヴィアンレッド が良かったなぁ。

 裏板はご覧のようにリヤドライブトレインがモールドされているので、ハッキリと 4WD であることが分かる。ヴィヴィオ の シャシー の特徴をきちんと簡潔に捉えていて嬉しい。ただ、一応、「1992」 と銘打たれているので、念のために書いておくと、A、B 型 の ヴィヴィオ4WD には、リヤホイールアーチ前方に 「4WD」 の楕円の小さなステッカーが貼付される。

 先にも書いたように、全体的なプロポーション の捉え方も素晴らしいのだけど、モールド、具体的に言えば、サイドスカート、筋彫り、パネル部品と灯火類などとの取り合いのエッジがちょっと緩い。

 もし、イクソブランドで単品で発売される場合には、若干このあたりに手を加えてもらえると、バリエーションまで揃えようという 「ヤル気」 が出るのだが(笑)。

イクソ 1/43 スバル ヴィヴィオ RX-R 4WD(8)

ミニチュアカーって、重箱の隅を突つき始めたらキリがない。突つくのは、自分が思い入れの深いクルマであるがゆえである。まだまだ書きたいことはある。だがそんな些末なことよりも、現在でも、多くの人々から愛されている ヴィヴィオ をこうしてモデル化してくれたことを心から感謝したい。

 きっと、このモデルを手にできたことで、長年の胸のつかえがスーッと消えた人という人も、スバリストならずとも、たくさんいるはずだからである。

 というのは 「個人的願望」 ではない。この ヴィヴィオ は、発売と同時に書店店頭はおろか、Webでも手に入れることが難しくなってしまったからである。確かに現在でも ヴィヴィオ を愛する人々はたくさんいる。それは、ヴィヴィオ という クルマ に、富士重工業 の 技術陣 が惜しみなく情熱と愛情をこめて育て上げたからこそ、その人々の心を捉えて離さないのだ。

 そのようやく誕生した ヴィヴィオ の金型を使って、今度は B型 RX-RA の フェザーホワイト と、最終型である F型 RX-R の ピュアブラック・メタリック、それに 1999年、モンテカルロラリー に出場した 2台 の RX-R が発売される。

 この 1999年 モンテカルロラリー に出場した 2台 については、ヴィヴィオ フリーク の方の、ヴィヴィオ の海外モータースポーツ参戦リザルトを詳細に追っているページ があるので、ぜひご覧頂きたい。とても勉強になる。

 困った。金がない。

 だが、買わなければ心の平安は得られない。かくして 「スバルの間」 に、来年もまた、ミニチュアカーは降り積もっていくのだった。


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